オテサーネク

オテサーネク [DVD]

オテサーネク [DVD]

 だいぶ感想書くのが遅くなりました。ヤン・シュヴァンクマイエルの、一部にアニメーションを使用した長編映画。やっぱり絶妙に気持ち悪いです。でもそれがいい。このジャケットを見て何かピンと来て、かつ多少グロいのが平気な人は楽しめるかと思います。
 チェコの民話「オテサーネク」は、不妊に悩む夫婦が人の形をした切り株を子供代わりに据えてみたところそいつが動き出し、どんどん色んなものを食べていくという話。その舞台を現代に移し変えて翻案したのが今作。動く切り株はCGなどでは全くなく、少しずつ動かしながらひとコマひとコマ撮っていくという手法で撮られている(っぽい)ので、キャラの動きがガクガクしていて、それがむしろ異様で良いです。
 現代なので舞台はマンションです。そこには夫婦の他に、子供に興味を持つ女の子(ジャケの子ね)とその両親、ロリコンの爺さん、キャベツ育ててる婆さんが住んでおります。美男美女なんか一人も出てこず(笑)、みんなクセのある雰囲気を醸し出してます(…奥さんは結構美人かね)。個人的にはロリコン爺さんに笑いました。子供見るときの顔があまりに嬉しそう過ぎる。あまりの嬉しさに心臓発作起こすし(笑)。
 あらすじを聞いただけではこの映画、切り株子供が動き出してから本格的に動き出すものと思われるかもしれません。実際それはそうです。でも、この切り株が動き出すまでもかなり面白いです。この夫婦の、子供に対する渇望が狂気じみていく様が見もの。特に奥さんの目がヤバイです(笑)。このまんま動き出さなくてもそれはそれで充分面白いものになっただろうなと思わんでもありません。でも同時に、不妊と狂気を切り株が動き出す理由とするのは、現代に翻案したからこそ可能だったのかとも思います。
 シュヴァンクマイエルは無生物に生命を与えるというモチーフと食事に対する執着がかなり強い作家だと思いますが、そう考えると「オテサーネク」は確かに格好の題材だなあと。そのオブセッションを、グロテスクさと滑稽さで彩って吐き出すのにこれほど適した物語はないでしょう(というかそのまんまですね)。スプラッタかよというようなグロいシーンもあれば、思わず笑ってしまう場面もあるし。それに血生臭い話ではあるけど切り株が動き出して以降の方が雰囲気はユルくなっていきます。切り株のオティークがかわいく見えないでもないし(笑)。また本筋とはあまり関係ない食事シーンでも、相変わらずベチャベチャしたスープとかが接写で映されまくります。ここまで食事をキモく映す人もなかなかいないでしょう(笑)。彼の変態ぶりは全然てらいが無くて素敵。